生成AIの進化は目覚ましく、企業でも広告制作や業務効率化などさまざまな場面で活用が進んでいます。
しかしその一方で、生成AIの使い方を誤ったことで炎上や風評被害に発展するケースが急増しています。
とくに2025年後半以降は、表現の質だけでなく「その会社がAIを使う姿勢そのもの」が問われる段階に入りました。
本記事では、実際に起こった生成AI関連の炎上事例を企業目線で紹介しながら、なぜ炎上が起こるのか、どのようなリスクがあるのか、そして炎上を防ぐために社内で何を整えるべきかを解説します。
この記事の結論
生成AIの炎上は、AIを使ったこと自体ではなく、使い方と見せ方でつまずいて起こります。企業が押さえるべき点は次の5つです。
本記事で紹介する事例について、当社はいかなる関与もしておりません。掲載内容に関するご質問やご対応はできかねますので、あらかじめご了承ください。
また、本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的な判断については専門家にご相談ください。
生成AIは人件費削減の裏で炎上リスクが高い

生成AIは、制作コストの削減において大きなメリットがあります。
たとえばCMの動画をすべて生成AIで仕上げれば、撮影スタッフ、出演者、撮影時間、動画編集といったあらゆるコストを圧縮できます。
専門機材や動画編集の知識がなくても、プロンプトを入力するだけで一定の品質の映像ができあがる点は、企業にとって大きな魅力です。
ただ、それだけに生成AIは創作物としての倫理観が問われやすく、炎上しやすい性質を持っています。
とくに問題になりやすいのが、努力や技能が反映されにくいという点です。
生成AIを使いこなすこと自体にも技能は必要ですが、受け手の側からは「手を抜いた」「安く済ませた」と受け取られやすく、ブランドの印象を損なう要因になります。
便利で楽だからという理由だけで生成AIを業務に取り入れることは、炎上リスクが高い判断です。
導入の目的と社内の運用ルールをセットで整えたうえで使い始めてください。
なぜ生成AIで炎上するのか

生成AIによる制作物は、広告ポスター、CM動画、ガイド音声など、さまざまな形で私たちの生活に入り込んでいます。
企業においても、生成AIを活用してプロモーションやサービスに付加価値を付けようとする動きが加速しています。
一方で、生成AIをきっかけとした炎上も繰り返し起きています。
ここでは、企業が踏みやすい7つの原因を整理します。
倫理観に反すると反感を買う
生成AIによる制作物は、倫理観に反する表現になりやすく、それが反感を買って炎上につながります。
生成AIは、人間では思いつかないアイデアを出すことがあり、その表現が魅力的に見える場合があります。
しかしその表現は、文化や宗教といった背景を踏まえていないことが多く、意図せず倫理観に反する内容が生まれます。

これは、文化や国籍を越えてあらゆるデータが学習に取り込まれていることも理由の一つです。日本国内の感覚だけで確認しても、見落としが起きます。
広告表現が不気味に見える
生成AIによる人物表現は、精巧である一方で、わずかな違和感が強い嫌悪感につながることがあります。
人間に近いけれど完全には人間に見えないものに対して、人が強い違和感を示す現象は「不気味の谷」と呼ばれています。
生成AIで作った人物の映像や画像は、まさにこの領域に入りやすい表現です。

また、人体の構造上ありえない角度で関節が曲がっている、指の本数が違うといった破綻も起こりやすいため、公開前の確認が欠かせません。
人が作った作品が生成AIと間違われる
クリエイターが手作業で制作したものが生成AIによるものだと疑われ、批判が広がるケースもあります。
生成AIの表現が多様化するなかで、人が作ったものとAIが作ったものを見分けることは難しくなりつつあります。
この見分けのつかなさが、無関係のクリエイターを傷つけ、炎上に発展します。
実際、2025年に東洋水産の「赤いきつね」の広告動画が話題になった際にも、アニメーションが生成AIではないかと疑う声が上がりました。
これに対してアニメ制作会社は生成AIの使用を明確に否定し、あわせて誹謗中傷や虚偽情報の拡散を控えるよう呼びかけています。

生成AIを使っていなくても、生成AIをめぐる炎上に巻き込まれることがあります。
制作工程を説明できる状態にしておくことが、企業にとっての防御になります。
学習データが著作権侵害を疑われる
生成AIは膨大な学習データをもとに生成物を作りますが、どのようなデータが使われているかが明確になっていないケースが少なくありません。
その結果、誰かの制作物とよく似た生成物が出力されることがあります。
度を超えた類似が見られる場合は、著作権侵害を疑われて炎上する可能性があります。
とくに個人のクリエイターは、自分の作品が学習データとして使われることを望んでいない場合が多く、ファンからの指摘によって発覚することもあります。
人間の仕事を奪うと危惧される
生成AIの発展によって人間の仕事が奪われるのではないかという危機感が、企業への反感につながることがあります。
イラストレーター、ライター、俳優、声優など、さまざまな業界でこの問題が議論されています。
生成AIの品質が日々向上していることもあり、制作者側の危機感は強まる一方です。
この論点は、学習データの無断利用という著作権の問題と結び付けて語られることが多く、生成AIを使う企業は支持しないという声につながる場合があります。
AI利用を隠していたことが後から発覚する
生成AIを使ったこと以上に批判を集めるのが、使っていないと説明した後で、実際は使っていたと判明するケースです。
いったん否定してしまうと、事実が明らかになった時点で、AIの利用という論点が企業の誠実さという論点に置き換わります。
批判の対象が広告表現から企業姿勢そのものに移るため、収束までの時間も長くなります。
問い合わせを受けた段階で事実関係が確認できていない場合は、否定も肯定もせず、確認中であることを伝える対応が安全です。制作過程の記録を残しておくと、この確認を短時間で行えます。
外注先の納品物に生成AIが使われていた
自社では生成AIを使っていなくても、外注した制作会社やイラストレーターが生成AIを利用していた場合、発注者である企業が批判の矢面に立ちます。
制作の全工程を発注者が確認することは現実的ではないため、発注時の取り決めが実質的な防御策になります。

発注書や契約書に、生成AIの利用可否、利用する場合の申告義務、第三者の権利を侵害していないことの保証を明記しておいてください。
生成AIの炎上事例12選

生成AIをめぐる炎上は、AIの普及とともに件数を増やしています。
ここでは、実際に起きた事例を年代順に整理して紹介します。
論点は年を追って変化しています。
2023年は学習データと著作権が中心でしたが、2024年には表現の品質や不気味さが加わり、2025年以降は「その企業がAIを使う姿勢そのもの」が問われる段階に入りました。
特に生成AIを使って仕事をしている人は、明日は我が身という気持ちを持って炎上事例を見ていくことをおすすめします。
思いもよらないことがきっかけで、炎上が生まれることを知っておきましょう。
以下、ご紹介する事例に関して、
当社は、関係性もとい、ご紹介している事例におけるいかなる関与もしておりません。
以下の内容について一切の責任を負いません。
内容に関するご質問やご対応はできかねますので、あらかじめご了承ください。
アサヒビール|利用した画像生成AIソフトが問題視された事例(2023年)
2023年、アサヒビールのキャンペーンで生成AIソフトを利用したことが批判を集めました。
このキャンペーンは、自分の写真とシーンを選ぶだけで誰でも生成AIイラストを作れるという企画でした。
ここで使われていた「Stable Diffusion」は画像生成AIとして広く知られる一方、アメリカでは学習データの利用をめぐって漫画家が訴訟を起こしていました。
そのような背景を持つソフトを大手企業が公式に採用したことが、炎上の火種となりました。
参照:Asahi
このキャンペーンでは、一般の参加者が自分の写真を使ってイラストを作る流れだったため、多くの人の画像データが学習に使われるのではないかという懸念も指摘されました。

ツール選定では、機能だけでなく学習データの取り扱いまで確認する必要があります。
集英社|AIグラビア写真集が販売終了となった事例(2023年)
2023年、集英社から販売された「AIグラビア」写真集が販売終了となりました。
問題となった写真集は、編集部が生成AIを利用して作成したグラビア画像を集めたものです。写っている女性には架空の名前が付けられ、公式SNSまで作成されていました。
積極的にプロモーションを行っていたにもかかわらず、写真集の販売は突然中止となりました。
中止に至った理由は明示されていませんが、生成AIの利用に関する問題が大きくなる前の判断であったと考えられます。
参照:ITmedia NEWS

批判が拡大する前に自ら中止を決断した点は、企業対応として参考になります。判断が早ければ、大きな問題にならずに済みます。
マクドナルド|AI広告の不自然さが批判を集めた事例(2024年)
マクドナルドが生成AIで制作した広告が、SNSを中心に批判を集めました。
内容は、女性がフライドポテトを食べる姿が次々と映されるものでしたが、その表現に気持ち悪さを感じる人が多かったことが批判の原因です。
前述した「不気味の谷」に該当する受け取られ方をした事例だと言えます。
参照:東洋経済オンライン

話題性やコスト削減を狙った生成AIの活用が、そのままブランド毀損につながった事例です。
人物が登場する広告は、とくに慎重な確認が必要になります。
マジック:ザ・ギャザリング|AI利用の否定から一転して認めた事例(2024年)
世界的に知られるカードゲーム「マジック:ザ・ギャザリング」の公式SNSに投稿されたイラストが、生成AIによるものではないかと指摘されました。
公式は当初、生成AIを一切使用していないと発表します。
しかし疑念は払拭されず、その後、一部に生成AIの利用があったことを認めました。
この二転三転した対応そのものが、炎上の主な原因になりました。
参照:GIZMODO

この件では、イラストレーターが契約を打ち切る動きにまで発展しました。
事実確認を終える前に否定してしまうと、失うものが大きくなります。
ワコム|クリエイター向け企業ゆえに疑いが強まった事例(2024年)
2024年、ワコムのアメリカ支社がSNSのキャンペーンで使用したイラストが、生成AIによるものではないかと指摘されました。
問題となったドラゴンのイラストには、人が描いたとは考えにくい不自然な描写が見つかりました。
ワコムはペンタブレットやイラストツールを販売する企業であるため、クリエイターを支える立場の会社が生成AIを使うことへの疑問の声も多く上がりました。
同社は、当該イラストが生成AIではないと認識して利用したものの、制作過程のすべてを確認することはできないとして、イラストの使用を取りやめています。
参照:ITmedia NEWS

実際に生成AIだったかどうかよりも、そう思われるだけで炎上につながります。
自社の事業内容とAI利用の相性は、事前に検討しておくべき論点です。
スギ薬局|キャンペーン画像にAI疑惑が向けられた事例(2024年)
2024年、スギ薬局のXに投稿されたキャンペーン用のイラストが、生成AIによるものではないかと指摘されました。
公式アカウントは生成AIかどうかについて言及していませんが、不自然な描写があるという指摘は一部で大きくなりました。
批判のなかには、大手企業が著作権侵害の疑いがある技術に加担するのかという声も見られました。
参照:X

学習データの利用に関する法整備が追いついておらず、判断がグレーな状態のままであることも、批判が起きやすい理由の一つです。
ONE PIECE関連|作者の発言が学習データ問題と結び付いた事例(2024年)
2024年、人気漫画「ONE PIECE」の作者である尾田栄一郎さんの発言が批判を集めました。
問題になったのは、写真を取り込んでワンピース風の画像に変換するアプリの機能に関する発言です。
不適切な画像でもワンピース風になるのかという問いに対し、編集部が規制していると答えたことに憤っていると明かした点が、学習データの無断利用を助長するものとして受け止められました。
ディープフェイクによる被害が多発している状況も重なり、批判が広がりました。
参照:週刊実話WEB
車折神社|公式Xの画像変更が批判され謝罪に至った事例(2025年)
2025年、京都の車折神社が公式Xアカウントの画像を生成AIによるイラストに変更したことで批判を集めました。
車折神社は芸能の神様が祀られ、著名人が多く訪れる神社として知られています。
そのため、芸能に関わる神社が生成AIを使うことへの疑問の声が多く寄せられました。
さらに、公式アカウントが日常的にAIで制作されたイラストを拡散していたことも判明し、批判が拡大しました。
神社は2025年3月22日、公式サイトで謝罪文を掲載し、公式Xアカウントを削除して今後SNS運用を行わない方針を表明しました。
参照:車折神社 公式サイト/関西テレビ

この騒動では、起用されたイラストレーターや担当職員にも攻撃が向かい、神社へ脅迫メールを送った男が威力業務妨害の疑いで逮捕される事態にまで発展したと報じられています。
批判の矛先が関係者個人へ向かう点は、生成AI関連の炎上に共通する特徴です。
JAL|カード紹介ページの生成AI画像に指摘が集まった事例(2025年)
2025年8月、日本航空の高級クレジットカード「JAL Luxury Card」の紹介ページに使われた画像について、生成AIによるものではないかという指摘がX上で相次ぎました。
報道によれば、飲食のシーンや決済のシーンに不自然な描写が複数含まれていた点が指摘されています。
同社は一部の画像が生成AIで作成されたものであることを認め、誤解を招く表現があったとして謝罪し、不自然とされた画像をすべて取り下げたと説明しました。
その後の取材では、これらの画像が外部の制作会社と連携して制作されたもので、画像審査の体制やレビュー手順の明文化に不備があり、品質基準を満たさない画像が審査不十分のまま納品されたと説明されています。

高級感や信頼性を打ち出すブランドほど、画像の粗が商品の価値そのものへの不信につながります。
外注先の制作物であっても、批判は発注者である企業に向かう点にも注意が必要です。
神戸風月堂|SNS投稿の画像が生成AIだと指摘された事例(2025年)
2025年8月、洋菓子店の神戸風月堂の公式Xが、あんこを大量に誤発注してしまったとして無料提供のサービスを告知したところ、添えられていた画像が生成AIによるものではないかと指摘されました。
報道によれば、袋や箱のサイズが不揃いである点などから疑問の声が上がり、誤発注そのものが事実ではないのではないかという受け止め方につながったとされています。
同社は翌日に投稿を行い、誤発注は事実であるとしたうえで、仕入先に迷惑がかかる可能性を考慮して実物に近い生成画像を使用したこと、説明が不十分であったことを説明し、謝罪しました。
参照:J-CASTニュース

生成AIの使用そのものよりも、実際の出来事を伝える投稿に生成画像を使ったことで、投稿全体の信ぴょう性が疑われた事例です。
事実を伝える場面では、生成画像である旨を先に明示する必要があります。
コカ・コーラ|AI制作のホリデーCMが2年続けて議論を呼んだ事例(2024年・2025年)
コカ・コーラが生成AIを用いて制作したホリデーシーズンのCMは、2024年と2025年の2年にわたって議論を呼びました。
2024年のCMは、1995年に公開された広告をオマージュして複数のAIスタジオが制作したものです。
報道によれば、映像の質感や動きの不自然さに対して、主にクリエイターから批判的な意見が多く寄せられました。
同社は、人間のストーリーテラーと生成AIを組み合わせて制作したと説明しています。
2025年に公開されたCMでも同様の反発が起こり、長く親しまれてきたブランドの世界観をAIに置き換えたことへの違和感が指摘されました。

歴史のあるブランドほど、受け手が抱く「らしさ」への期待は強くなります。
効率化の対象にしてよい領域かどうかは、ブランドごとに判断が変わります。
サクラクレパス|子会社が制作したAIポスターが撤去に至った事例(2025年)
2025年12月、サクラクレパスが海外のイベントで掲出した販促ポスターについて、生成AIで制作されたものではないかという指摘が広がりました。
報道によれば、自社のロゴにあたる部分の表記や商品のイラストが実際のデザインと異なっていた点が疑問視されました。
画材メーカーという、創作する人を支える立場の企業であったことから、批判はさらに強まりました。
同社は当該販促物の使用停止と撤去を要請したうえで調査を進め、2025年12月11日に、販売子会社が生成AIを用いて制作したものであったと公表し、グループ会社内のデザインチェックのプロセスが十分ではなかったとして謝罪しました。
JALの事例と同じく、制作を担ったのは自社の外側でした。発注先やグループ会社まで含めた確認体制がなければ、生成AIのリスクは管理できません。
2025年末以降、生成AIによる画像への視線は一段と厳しくなりました。個人の写真を容易に加工できる機能が社会問題として報じられたこともあり、AIを使っているというだけで警戒される空気が生まれています。
生成AIで炎上しなかった事例

生成AIの利用には炎上がつきものと言っていいほど、炎上リスクが高く注意が必要です。
ただ、中には生成AIを上手く活用して、プロモーションやサービスに成功している事例もあります。
ここでは、炎上しなかった事例を中心に紹介します。
以下、ご紹介する事例に関して、
当社は、関係性もとい、ご紹介している事例におけるいかなる関与もしておりません。
以下の内容について一切の責任を負いません。
内容に関するご質問やご対応はできかねますので、あらかじめご了承ください。
伊藤園|CMでの起用が活用事例として評価された例(2023年)
2023年、伊藤園のCMで実在しない女性を生成AIで制作したことが話題になりました。
生成AIを採用したきっかけは演出上の必要性です。
未来の自分が今の自分にお茶を渡すというコンセプトを、実在のタレントの二役ではなく生成AIで表現する判断に至りました。
このCMは生成AIの活用事例として大きく取り上げられ、注目を集めています。

批判を招かなかった理由は、生成AIで制作した人物が自然で、不快感を与えない表現だったことが大きいと考えられます。
演出上の必然性が説明できた点も重要です。
マッチングアプリ「オタ恋」|広告のインパクトが好意的に受け止められた例(2023年)
2023年、マッチングアプリ「オタ恋」の広告に使われた生成AIイラストが話題を呼びました。
使用されたイラストは、いかにも生成AIで作られたと分かる仕上がりでしたが、その視覚的なインパクトが大きく、ネタとして受け入れられる流れができました。
その後もさまざまなパターンのイラストを展開し、継続的な話題づくりにつなげています。
参照:ITmedia NEWS

運営会社は、この広告によって男性は1.5〜2倍程度、女性は3〜7倍程度まで入会者が増加したと述べています。
生成AIを隠さず、表現として使い切った点が奏功しました。
新潟日報社|権利保護を明確にしたAIサービスの例(2024年)
2024年、新潟日報社がエクサウィザーズと業務提携し、生成AIサービスを開始したことが話題になりました。
このサービスでは、企業の内部情報を入力しても外部に漏れない設計になっています。
また、新潟日報の記事データが生成AIの学習データに使われる構造にはなっておらず、著作権を保護している点も特徴です。
参照:読売新聞オンライン

ここまで明確に権利の問題へ向き合っている例は多くありませんが、炎上を防ぐという観点では、この水準の設計が理想形になります。
Yahoo!知恵袋|利便性の向上に絞ったAI導入の例(2024年)
Yahoo!知恵袋が導入したAI回答機能は、便利な機能として受け入れられました。
この機能は、過去の膨大なベストアンサーを参照して回答を導くものです。
似た質問が繰り返される場面で、人が同じ回答を書く負担がなくなり、質問者の問題解決も早くなりました。
参照:PR TIMES

広告ではなく、AIをシステムに組み込んだ事例は批判を受けにくい傾向があります。利益の追求より利便性の向上が目的として明確だからです。
生成AIに反対する声はいまだ多い

生成AIソフトは、学習データを無断使用するものが多く、これが著作権侵害にあたると問題視され、いまだ反対の声は多いです。
さらに生成AIが蔓延することで創作者のモチベーションのダウンや、仕事がAIに奪われることへの危惧もあります。
ここでは、生成AIが反対されていることが分かる出来事をまとめました。
以下、ご紹介する事例に関して、
当社は、関係性もとい、ご紹介している事例におけるいかなる関与もしておりません。
以下の内容について一切の責任を負いません。
内容に関するご質問やご対応はできかねますので、あらかじめご了承ください。
声優団体による問題提起(2024年)
2024年、「NOMORE無断生成AI」という団体が、生成AIに対する問題提起の動画を公開し、大きな反響を呼びました。
この動画は、声優にとって商売道具である声が生成AIに無断で使用される問題を訴えるものです。日本の著名な声優が25人以上関わっており、注目を集めました。
背景には、現行の法律では声そのものに明確な権利が認められていないという事情があります。
参照:NOMORE無断生成AI
イベント出演の辞退(2024年)
2024年、アニメ音楽をオーケストラで演奏するイベントのポスターに生成AIが使われたことで、出演予定だった歌手が出演を辞退しました。
イベントの告知段階から、アニメ文化を広める催しに生成AIを使うことへの疑問の声が上がっていました。
企画の意図と生成AIの持つ性質が合っていなければ、出演者や協力者の離脱につながります。
参照:ITmedia NEWS
イラストツールが生成AIを導入しない方針を表明(2024年)
2024年、iPad向けの人気イラストツール「Procreate」が、生成AIを導入しない方針を発表しました。
他のイラストツールが生成AIを取り入れるなかで、反対の立場を明確にした発表として注目され、クリエイターからは好意的に受け止められました。
参照:ITmedia NEWS
顧客が誰かを踏まえて立場を明確にすることは、それ自体が炎上の予防策になります。
AIで制作したイラストへの反感
SNSでは画像生成AIを使った活動が広がり、生成物を販売する動きも見られます。一方で、こうした活動への反感が根強いことも事実です。
反対する立場からは、学習データの無断使用による著作権侵害を疑う声が多く上がっています。
加えて、他人の作品を利用して努力せずに利益を得ているという受け止め方も残っており、受け入れられにくい状況が続いています。
そもそも生成AIは著作権侵害に当たるのか

生成AIの利用が著作権侵害にあたるかどうかは、企業が最も気にする論点です。
日本では、文化審議会著作権分科会法制度小委員会が2024年3月に「AIと著作権に関する考え方について」を公表し、解釈の整理が示されました。
ただしこの文書は、その時点での一定の考え方を示したものであり、法的な拘束力を持つものではないと文書自体に明記されています。
- AI生成物に既存の著作物との類似性と依拠性が認められる場合は、著作権者の許諾が必要になります
- AI生成物は、その過程に思想または感情の創作的な表現が含まれない場合、著作物として保護されません
偶然似てしまった場合でも、元の作品への許諾が必要になり得るという整理である以上、生成AIが著作権侵害につながる可能性は否定できません。
関連する動きとして、人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律が2025年に成立し、同年中に全面施行されました。
これは罰則によって規制する法律ではなく、活用の推進と権利利益の保護を両立させる枠組みとして整理されています。
また、経済産業省と総務省が策定するAI事業者ガイドラインも版を重ねています。
法整備が追いついていない領域であるため、判断がグレーな状態が続く限り、生成AIの取り扱いによる炎上は起こりやすい状況が続きます。
個別の判断は、必ず専門家に確認してください。
生成AIを安全に使うための社内ルールと公開前チェック

ここまで見てきた炎上事例には、共通する構造があります。
担当者個人の判断で生成AIを使い、確認の工程を経ずに公開している点です。
逆に言えば、社内のルールと確認工程を整えるだけで、炎上リスクの多くは事前に下げられます。
生成AI利用ガイドラインに書くべき7項目
まず、社内で生成AIをどこまで使ってよいかを文書化します。
最低限、次の7項目を定めてください。
ガイドラインは作って終わりにせず、判断に迷った事例が出るたびに追記していくと、実務で使えるものになります。
公開前チェックリスト
生成AIで作成した画像や動画を公開する前に、次の項目を確認してください。
とくに人物が登場する広告クリエイティブは反発を受けやすいため、最終的な仕上げは人の手で行う体制が安全です。
AI利用を開示すべきかどうかの判断基準
生成AIの利用をどこまで公表するかは、業種と用途によって判断が分かれます。次の考え方が目安になります。
| 用途 | 開示の考え方 |
|---|---|
| 広告やCMのビジュアル | 開示する方が安全です。後から発覚した場合の批判の方が大きくなります |
| 実在の人物に見える人物表現 | 必ず開示します。実在すると誤解されると、より強い批判につながります |
| 社内資料や下書き | 開示は不要です |
| 創作性が価値の中心にある商品 | 開示したうえで、なぜ使ったかまで説明する必要があります |
クリエイターや創作文化と関わりの深い業種ほど、AIの利用に対する視線は厳しくなります。
自社の顧客がどちらの立場に近いかを踏まえて判断してください。
制作を外注するときに確認すること
外注時は、次の3点を発注段階で明確にしてください。
口頭で伝えるだけでは、問題が起きたときに事実関係を確認できません。
文書に残しておくことが、発注者側のリスク管理になります。
生成AI関連で炎上したその後のリスク

生成AIによって炎上すると、その後にさまざまなリスクを負うことになります。
多くは意図せず起こるため、生成AIを業務で使う企業は、事前に影響を想定しておく必要があります。
取引先や顧客との信用悪化
生成AIによる炎上は、取引先や顧客からの信用を損ないます。
炎上の内容にもよりますが、取引先が創作者を尊重する立場を取っている場合、最悪のケースでは契約を打ち切られることも考えられます。
生成AIに否定的な消費者からも敬遠され、売上に影響が及ぶ可能性があります。
影響は取引と売上にとどまりません。
企業の評判は採用活動にも直結するため、求職者が社名を検索した際に炎上関連の記事が並ぶ状態は、応募意欲の低下につながります。

これらのリスクを避けるには、生成AIの利用方針を策定し、社内外に対して透明性のある情報開示を行うことが重要です。
あわせて従業員への教育とリスク管理体制の構築が求められます。
誹謗中傷による精神的な負担
生成AIで炎上すると、担当者や関係者に対する誹謗中傷が発生する可能性があります。
SNSのダイレクトメッセージを通じて直接送られたり、匿名掲示板に書き込まれたりと、攻撃はネット上のあらゆる場所で起こります。
これらの言葉による攻撃は、想像以上に精神的な負担を伴います。

企業としては、問題の収束を最優先にしつつ、担当者や起用したクリエイターを守る体制を用意しておくことが必要です。
相談窓口の設置や、対外的な窓口の一本化が有効です。
風評被害による長期的な損失
炎上が長引くと、風評被害に悩まされることになります。
一度炎上という形で知名度が上がってしまうと、そのイメージを拭うことは簡単ではありません。
ネット上には炎上を扱ったニュースやSNS投稿、動画が広がり、それを見た人がさらに話題を広げるという循環が起こります。
長期化すると、社名を検索した際に予測候補へネガティブなキーワードが並んだり、検索結果が炎上を扱った記事で埋まったりします。
当社が実施した調査でも、検索結果や予測候補にネガティブな情報が表示されることで印象が悪化すると回答した人は約8割にのぼりました。

SNS上の話題が収まっても、検索結果に残った情報は消えません。ここから先は、ネット専門の風評被害対策が必要な領域になります。
生成AIで炎上したときの初動対応

炎上対応では、何をするかと同じくらい、いつまでに行うかが結果を左右します。以下は対応の目安となる時間軸です。
| 経過時間 | やるべきこと |
|---|---|
| 発生から1時間以内 | 該当の投稿や広告と、寄せられている反応を記録します。 制作工程の記録を集め、生成AIを使ったかどうかの事実確認を始めます |
| 6時間以内 | 拡散の規模と、批判の中心にある論点を整理します。 対応方針を責任者が決定します |
| 24時間以内 | 事実関係と今後の対応を公式に発表します。 確認できていないことは、確認中であると明示します |
| 72時間以内 | 関係する外注先やクリエイターへ個別に連絡します。 二次被害を受けている関係者がいないかを確認します |
| 1週間以降 | 再発防止のためのガイドラインを策定し、公表します。 検索結果とSNS上の残存情報の監視を継続します |
やってはいけない対応
とくに最後の点は、生成AI関連の炎上で実際に起きています。
起用した相手を守る姿勢を示すことが、結果として企業の評価を守ります。
生成AIの炎上による風評被害対策

生成AIによって炎上すると、SNS、匿名掲示板、検索エンジンなど、さまざまな場所で風評被害が生まれます。
被害を最小限に抑えるためには、事後の対策が欠かせません。
生成AIの利用についての立場を明確にする
生成AIで炎上する理由として多いのが、その立場で生成AIを容認するのかという声が大きくなることです。
とくに創作に関わる業種では、生成AIとどう向き合っているのかを問われる場面が増えています。
使用しているツールの学習データの扱いを含め、透明性を確保しておくことが予防につながります。
仮に炎上した場合も、今後の方針を明確に示すことで、憶測やデマの広がりを抑えられます。
ネガティブ記事への対策
生成AIで炎上すると、ネット上に炎上を取り上げたネガティブな記事が多く出回ります。
これらが検索結果の上位に表示されると、事情を知らない人にも広く読まれ、悪い評判がさらに広がります。
これを防ぐ方法の一つが、逆SEO対策です。
逆SEO対策は、ネガティブな記事が上位に表示されている状態を改善する取り組みを指します。
検索結果の1ページ目には10件程度の記事が並び、多くの人はこの範囲で目的の情報を見つけます。
ネガティブな記事を2ページ目以降に下げることで、目に触れる機会を大きく減らせます。
ネガティブな検索候補への対策
生成AIで炎上すると、検索フォームに社名を入力した際、後ろにネガティブなキーワードが予測候補として並ぶことがあります。
- 炎上
- 著作権侵害
- 盗用
- パクリ
こうした予測候補は、見た人に強いネガティブな印象を与えます。
しかも、すぐに消したいと思っても自社では消せません。
この表示を改善する方法が、サジェスト対策です。
サジェスト対策では、ポジティブなキーワードの表示を優先させることで、ネガティブなキーワードが並ぶ状態の解消を目指します。
逆SEO対策やサジェスト対策は、ネット風評被害対策を専門とする会社が対応しています。
誹謗中傷への法的対処
炎上に便乗して、事実に基づかない誹謗中傷が書き込まれることがあります。
営業妨害にあたるものから、人権侵害にあたるものまで内容はさまざまです。
放置することで精神的な負担や営業活動への影響が生じる場合は、投稿の削除を進めます。
削除は、投稿されたサイトの運営者へ申請することが一般的ですが、必ず応じてもらえるとは限りません。
運営者が削除に応じない場合は、弁護士を通じた法的手段を検討します。
発信者情報開示請求によって相手を特定し、裁判所を通じて削除を求める流れになります。
弁護士に依頼する場合は、時間と費用がかかることも踏まえて検討してください。
AI検索での見え方を管理する
炎上への対応で見落とされやすいのが、生成AIの回答に情報が残り続けるという問題です。
ChatGPTやGeminiで企業名を調べるユーザーが増えており、これらのAIはWeb上に公開された記事を参照して回答を作ります。
炎上を扱った記事が検索上位に残っていると、社名を入力しただけでその内容が要約されて提示される状態になります。
検索結果は1ページ目に何が並ぶかで印象が決まりますが、AIの回答はさらに単純です。
参照された数本の記事が、そのまま企業の評価として提示されます。
そのため、生成AIの炎上対策はSNSと検索結果への対応だけでは完結しません。
AIが参照する情報源の側に、自社の正確な情報を置いておく取り組みが必要になります。

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生成AIの炎上に関するよくある質問
生成AIについて特によく寄せられる質問をまとめました。
万が一のトラブルの際や、事前のリスク管理の参考にしてください。
生成AIを使うと必ず炎上するのですか。
そのようなことはありません。
伊藤園のCMやYahoo!知恵袋のAI回答機能のように、生成AIを活用しながら好意的に受け止められた事例もあります。
炎上の分かれ目は、AIを使ったかどうかではなく、表現の質、利用目的の説明、権利への配慮の有無にあります。
生成AIを使ったことは公表すべきですか。
広告やCMなど公開されるクリエイティブでは、公表する方が安全です。
後から発覚した場合、AIの利用そのものよりも、隠していたという受け止め方の方が強い批判を招きます。
社内資料や下書きの用途であれば、公表の必要はありません。
生成AIで作った画像は著作権侵害になりますか。
一律に侵害となるわけではありません。
文化審議会がまとめた考え方では、生成物に既存の著作物との類似性と依拠性が認められる場合には、著作権者の許諾が必要になると整理されています。
この文書自体は法的拘束力を持つものではないため、個別の判断は専門家への相談が必要です。
外注先が生成AIを使っていた場合、発注した企業も責任を問われますか。
法的な責任の所在は個別の契約内容によりますが、世間からの批判は発注者である企業に向かいます。
発注段階で生成AIの利用可否と申告義務を契約に明記しておくことが、実務上の対策になります。
生成AIの炎上はどのくらいの期間で収まりますか。
SNS上の話題は数日から2週間程度で沈静化することが多い一方、炎上を扱った記事や動画は残り続けます。
社名で検索した際に関連記事が上位に表示される状態は、数か月から数年にわたって続く場合があります。
炎上した記事が検索上位に残ってしまった場合はどうすればよいですか。
ネガティブな記事の表示順位を下げる逆SEO対策や、検索候補にネガティブなキーワードが並ぶことを防ぐサジェスト対策といった方法があります。
事実無根の内容が含まれる場合は、削除請求や法的手続きも選択肢になります。
まとめ:生成AIは使い方より見せ方でつまずく
生成AIは便利な反面、扱いを誤ると炎上や風評被害という大きなリスクを伴います。
今回紹介した事例を振り返ると、批判を集めた企業と受け入れられた企業の差は、AIを使ったかどうかではありませんでした。
倫理観への配慮、権利関係の確認、利用目的の説明、そして問われたときに答えられる準備の有無が、結果を分けています。
そのため、企業がまず着手すべきなのは、生成AIの利用ガイドラインと公開前の確認工程を整えることです。
担当者個人の判断に委ねている状態が、最も危険な状態だと言えます。
そして、炎上が起きてしまった場合に企業を長く苦しめるのは、SNS上の投稿そのものではありません。
検索結果と生成AIの回答に残り続けるネガティブな情報です。
事前の予防と、事後の風評被害対策の両方を想定しておくことで、生成AIと適切に付き合っていけます。
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